甲状腺の病気
甲状腺の病気

甲状腺とは首の前側、のどぼとけ(喉仏)のすぐ下に位置する、蝶のような形をした小さな内分泌臓器です。甲状腺が作るホルモンを「甲状腺ホルモン」といい、食べた物をエネルギーに変えたり、体温を保ったりと、「新陳代謝」に重要な役割を担っています。甲状腺ホルモンが正常に分泌され、体内で作用することによって、体は元気に働くことが可能となります。
甲状腺疾患には、甲状腺ホルモンが過剰になる甲状腺中毒症、甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症、甲状腺腫瘍があります。
代表的な疾患として、自己免疫の異常によって、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されるバセドウ病があります。
他にも甲状腺の破壊によって一時的に甲状腺ホルモンが大量に分泌される亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎があります。
バセドウ病は、本来であれば自分の体を守る免疫の異常によって生じる自己免疫疾患です。甲状腺を間違って刺激してしまう自己抗体(TSH受容体抗体:TRAb、甲状腺刺激抗体:TSAb)ができることで、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されてしまいます。典型的な症状としては、暑がりになり汗をかきやすくなったり、手が震えたり、体重減少、動悸などが現れます。下痢、気持ちが落ち着かない、怒りっぽくなる、疲れやすいなどの症状を伴うこともあります。女性では生理が止まることもあります。また、甲状腺全体が腫れて大きくなる「びまん性甲状腺腫」はバセドウ病の多くの方に認められます。眼球が突出して、周りの人に指摘されたり、目が完全に閉じなくなったりすることもあります。
検査としては採血で甲状腺機能や自己抗体を調べ、甲状腺超音波検査で甲状腺の大きさや血流を評価します。
治療は大きく分けて、抗甲状腺薬、放射性ヨウ素内用療法、手術の3つがあります。一人一人の症状や全身状態、生活環境などを考慮した上で治療方針を決定します。当院では主に抗甲状腺薬による薬物療法を行っており、治療効果や副作用(白血球数が著しく減少する無顆粒球症や肝機能障害など)の評価は、受診当日に判明する採血結果をもとに行うことが可能です。抗甲状腺薬の治療効果が乏しい場合や副作用で継続が困難な場合は、連携医療機関へ紹介し、放射性ヨウ素内用療法や手術を受けていただける体制を整えています。
バセドウ病はストレスによって病状が悪化したり、再発したりすることがあります。そのため日常生活では、できるだけストレスを避けて規則正しい生活を送るように心がけましょう。タバコを吸われている方は禁煙も重要になります。
亜急性甲状腺炎とはウイルス感染をきっかけに、甲状腺に強い炎症と甲状腺組織の破壊が生じ、血中に甲状腺ホルモンが漏れ出て、甲状腺中毒症を呈する疾患です。炎症による症状として発熱、甲状腺片側の腫れ、強い痛みがあります。時間経過とともに自然に炎症や甲状腺中毒症は治まりますが、高熱や首の痛みがひどい場合は生活に支障が生じるため、症状に応じて副腎皮質ホルモン(ステロイド)や抗炎症薬の投与が必要となります。ステロイドの内服で症状はおおむね改善しますが、急に内服を中止すると、ぶり返してしまうことがあるので、症状改善後も薬を少しずつ減らし、中止していきます。甲状腺機能は一時的な高値の時期をすぎると、いったん低下し、その後次第に正常化します。まれに甲状腺機能低下症が遷延することがあり、その場合は甲状腺ホルモン薬の内服が必要になります。
無痛性甲状腺炎は亜急性甲状腺炎と同じように、甲状腺組織が一過性に破壊されるために生じる甲状腺中毒症ですが、甲状腺に痛みはありません。自己に対する免疫反応が過大となって生じると考えられていますが正確な機序は明らかになっていません。出産、花粉症、ストレスなどがきっかけとなる場合が多いです。自然に治るため、バセドウ病との鑑別が重要で、血液検査や甲状腺超音波検査、症状経過によって判断します。
代表的な疾患として、橋本病があります。
橋本病は、自己免疫の異常により甲状腺に慢性的な炎症が生じ、少しずつ組織が破壊される疾患です。日本人で頻度が高く、成人女性の約10人に1人、成人男性の約40人に1人にみられます。ただし、橋本病と診断された方全員が甲状腺機能低下症になるわけではなく、実際に治療が必要な機能低下症に至るのは、そのうちの4~5人に1人未満といわれています。30~40代の女性に発症することが多い疾患ですが、症状の進行がゆっくりであるため、高齢になってから発見されるケースも珍しくありません。
全身の代謝が低下するため、症状としては寒がりになったり、体重の増加、倦怠感、かすれ声、便秘、高脂血症などが出現します。女性では月経異常を認めることもあります。また、気分が落ち込んだり、不安感が増したりすることもあり、うつ病や更年期障害と間違われることも少なくありません。
甲状腺機能低下症が認められる場合は、甲状腺ホルモン薬の内服を行います。昆布など海藻類に多く含まれるヨウ素の過剰摂取は、甲状腺の働きを低下させるため、過剰摂取が疑われる場合は、ヨウ素制限も必要となります。
甲状腺にしこりや結節ができる疾患です。無症状であることが多く、検診やCT、頸動脈超音波検査で偶然指摘されることがほとんどです。
多くは良性腫瘍であり、腺腫様甲状腺腫、濾胞腺腫、のう胞などがあります。定期的に超音波検査でサイズや内部構造に変化が生じないかを確認していきます。
一方、悪性腫瘍(甲状腺癌)には、乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫があります。この中で乳頭癌が全体の90%以上を占めるとされています。甲状腺乳頭癌は進行が遅くおとなしい性質であるため、早期に発見すれば、命にかかわることはあまりありません。治療としては一般的に手術を検討します。
甲状腺に腫瘍がみつかった場合、まず超音波検査を行い、悪性が疑われれば、精密検査として穿刺吸引細胞診を実施して良悪性を鑑別します。当院では連携医療施設にて検査を行っていただける体制を整えています。
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